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日記


by JF1EBPKH
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文楽

  学生時代、阿波の鳴門へ文楽人形の‘かしら’を作っている大江巳之助さんを訪ねたことがあります。文楽なんて見たこともないのに、そのかしらを作っている人に会いに行くなんて、今思えば冷や汗もんですが、かしらの材やきまり、また「がぶ」と呼ばれる乙女の顔が、突然頭から角を出し、口が耳まで裂けて般若の顔になってしまう構造など、何も知らない若造にいろいろ説明してくれました。その後、風俗史学会の先生方をお連れしましたが、もう大分前に大江さんはお亡くなりになってしまい、今文楽人形はどうなっているんでしょうか。
  昨日、大阪の橋本市長が文楽の補助金問題で話をしようとしたところ、人間国宝から断られて話が出来なかったという。能、歌舞伎、狂言など、日本の古典芸能の一つとして、これまでに大阪市としては文楽座に少なくない補助金を出してきてますが、補助金制度の見直しで、橋本市長は文楽に補助金は出さない、と明言してきました。これでは文楽は滅びてしまうと、誰もが思ってしまったことでしょうが、橋本市長の言い分を読んでみますと、うーんと唸ってしまいます。前にも書きましたが、講談の一龍齋貞鳳さんの著作に『ただいま講釈師24人』とあって、講談はもう滅亡すると思っていたところ、講談の定席『本牧亭』は先日廃業してしまいましたが、講釈師は3倍以上に増えています。噺家も一緒です。落語界は大盛況と言ってもいいかもしれません。
  橋本市長が言っているのは、文楽の入りが悪いのは、お客が芸術を解さないからだ、という不入りをお客のせいにし、自らを省みないからだ。文楽には補助金を出すが、文楽協会には出さない、という論法は正しい、と思います。講談も、落語も、能、狂言、また雅楽でさえもお客様が来てくれるよう工夫と、企画、また家元自身が積極的にセールスをしています。文楽にそれが出来ているでしょうか。古典芸能だから、人間国宝がいる芸能だから、という独りよがりの世界に、大阪市は判断を仕掛けたといえます。文楽協会は、どう返すでしょう。見ものです。
文楽_e0116694_1905798.jpg


大江巳之助さんを訪ねた頃、彫った版画です。‘文七’という代表的なかしらです。
文楽人形は、3人で一体の人形を操りますが、3人の息が合いませんと動きが美しく見えません。人形なのに、なぜこんな色っぽいしぐさが出来るのか、世界中に人形劇はありますが、文楽人形は、最高峰であることは間違いないと思います。
by jf1ebpkh | 2012-06-29 23:28 | 趣味 | Comments(0)