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私の本棚89

e0116694_23114212.jpg  帰宅時間が早くなったので、時々大和の古本屋に寄っています。先日、廉価本の棚に、竹田米吉著『職人』(中公文庫)と、川瀬一馬著『柚子の木』(中公文庫)がありました。何と、100円です。『職人』は、学生の頃、単行本で持っていました。でも、数年前に本の整理をした際、処分してしまったようで、書棚に見当たりません。100円ならダブってもいいかと、購入して再読です。
  この本は、職人が自身のことを書いた本としては結構有名な著作です。著者の竹田米吉氏は明治22年神田の棟梁の家に生まれ、大工の修行から始めますが、若くして鐘紡の向島工場、王子製紙の苫小牧工場などの現場監督を経験します。時代は、江戸の請負制から、近代産業として煉瓦や鉄筋工法に代わりつつあり、向学心に燃える氏は、築地の工手学校(現在の工学院大学)の夜間部に通い、次に創設間もない早稲田の建築科に学びます。その間に自身が経験した左官、ペンキ、土工、鳶などいく種類もの職人達の風俗、生活、考え方などが良くわかります。文庫のあとがきを読むと、単行本は山本夏彦氏が出版したそうで、絶版にしておくのはもったいないと、文庫本で再刊したそう。納得です。

随筆 柚の木 (中公文庫)

川瀬 一馬 / 中央公論社


  もう一冊は、国文学者の川瀬一馬先生の随筆です。でも、私には書誌学の大家として、何冊か読ませていただいてました。書名の柚子の木は、ご自宅に大きな柚子の木が数株あったことからで、柚子は実が成るまで、かなりの年を経ねばならないからだという。読んでみると、まあ、勉学の紙魚みたいに古書を漁っていらっしゃいます。安田善次郎氏から公私にわたる支援を受けたのも、この向学心があればこそ。敬服いたしますが、また古物の鑑定や古書の蒐集にかかわる各地の書庫探訪。そして、文楽や謡曲など、学問と趣味が一致しております。この本の序文を、なんと大漢和の碩学諸橋轍次大先生(川瀬一馬氏からは恩師にあたる)がしたためていらっしゃるのです。
  全国の古典籍の文庫を経巡りながらの食べ物の話など、学者でない部分が面白かったですね。論文でなく、随筆なればこそでした。
by JF1EBPKH | 2016-04-16 00:14 | | Comments(0)