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日記


by JF1EBPKH
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私の本棚103:地図をつくった男たち

  横浜中央図書館で開かれている『日本のかたち ~明治・大正・昭和の地図』展が良かったので、週末2回も続けて地図を見に行ってしまいました。特に、“幕末・明治日本国勢地図 初版 輯製二十万分一図 集成”に魅せられてしまいました。1ページが新聞紙全面より大きいのですが、それが百枚を越えるのです。墨一色ですが、山脈の描き方は等高線ではなく、ケバ式です。千島列島から樺太、小笠原諸島まで、全国版の地図帳になっています。※12月2日のページもご覧下さい。

私の本棚103:地図をつくった男たち_e0116694_23235323.jpg     もう一つ。 “明治前期測量 2万分の1フランス式彩色地図 -第一軍管地方二万分一迅速測圖・原圖復刻版-”こちらはい一枚ずつ額装されて壁に掲げられていました。どちらも、地図好きの世界では有名なものですが、現物はなかなかお目にかかれません。では、どういう人達がこのような地図をつくったのか。ということをこの本は教えてくれます。著者は、元国土地理院中部地方測量部長。1945年横須賀生まれの方ですが、技官として入所し、退官後はゼンリンに勤務し、その後は地図屋さんを開いている方です。私より5歳年長です。
  著者は、伊能図から上記の2図のように、日本には絵画的にも実用的にも実に美しい地図があったのに、なぜそうでなくなってしまったのか。それを、美しさから正確さへと地図作成の変遷の過程で‘かきたてるもの’が犠牲になったと言っています。地図に何を求めるか。その目的によって作り分け、使い分けをするのですが、すべての地図の基本が測量にあり、それを紙に写すことがどれほど困難を伴い、難しかったことを語っています。最近では新田次郎原作の〘剣岳〙の映画で測量の困難さが理解されてきてはいますが、1万分の一の地形図を描くのにかかる日数は、5cmX6cmの部分でも、一番かんたんな平地でも測量から製図になるまでは約1か月かかるのだと。  
  地図は、国土を描くのですから、昔は軍機の扱いでした。明治初期、文部省、民部省、工部省など、それぞれの役所でそれぞれの目的に即した地図が必要となり、各省で地図を作る部門が出来てしまいました。人材も財政も十分でない時期にです。それを最終的にまとめたのが日本では陸軍が創設され、地図の作成は陸地測量部に集約されていくのですが、日清、日露戦争時は大量の人材育成がなされています。この本では、大正、昭和に入る前で終わってしまいますが、現役の軍籍を持つ人達が敵地に入って測量することに、どれほどの危険と困難さを伴うか。考えただけでも大変なことです。現在でも、国境線でもめているのは日本だけではありません。歴史的な背景や、時の状況もありますが、裏づけとなるものは地図になります。先人の残してくれた財産に頭が下がります。

地図をつくった男たち: 明治の地図の物語

山岡 光治/原書房

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by JF1EBPKH | 2017-12-14 22:25 | | Comments(0)