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私の本棚104:職人の本3冊

  旅先で職人仕事を見せていただいたり、工房を訪ねたりしていると、創作意欲にかられていました。11月頃になると、来年の年賀状はどうしようか。あれにしようか、どうしようかと、考えているのも楽しい気分のものでした。しかし、最近はこの‘かきたてるような’気分がなかなか沸き上がってこないのです。先月訪れた金沢でも、あちこち尋ね歩きましたが、見ることは楽しくても、自分でやってみたいという気は以前ほど起りませんでした。
  山本英明著『塗師屋のたわごと』(角川oneテーマ新書、2002年刊)は、ちょっと古くなりますが、越前・河和田塗りの三代目。2010年にお亡くなりになってしまったそうですが、塗り物を買いもしない評論家が何を言っても、自分の作ったものを買ってくれた人を大事にしたいと、塗師屋の心意気を感じさせる内容がそこここに出てきます。自分の技にプライドを持ち、親にも息子にも妥協しないで、生活をちょっと豊かにするために本物の漆器を使って欲しいというその気分がいいじゃないですか。
  次は、関根由子著『伝統工芸を継ぐ男たち』(論創社、2017年刊)と、田中敦子著『もののみごと』(講談社、2012年刊)。最近は、職人の探訪ルポは読まないことにしていますが、どんなことを書いているのかちょっと気になったので。なぜ読まなくなってしまったかというと、後継者難、先細り、時世に合わないなど、読んでいて楽しくないからです。でも、現在の伝統工芸の世界は、かってのような状況ではなく、職人になりたいという若者はゾロゾロとは言わないまでも結構いるし、女性も増えているような気がしています。『伝統を継ぐ男たち』に描かれている男たちはまさにこの人たちで、いずれも70年代,80年代に生まれた人ばかり。著者は、『伝統工芸を継ぐ女たち』というルポも描いているので、あえてこの書名にしたルポを書いたのでしょうが、一度違う職業についても、Uターン、Jターンして家業を継いだり、後継ぎになったりした男たちの話です。
   『もののみごと』も似た内容ですが、私が見知っていた伝統工芸の担い手たちはすでに鬼籍に入ってしまい、その後継者の子か孫の時代になっていることを改めて知らしめさせてくれた書籍でした。たとえば、小宮康孝さんという江戸小紋の人間国宝の方がいらっしゃいました。その方の型紙を彫る職人さんが、私の娘の同級生の親御さんであることを偶然知りましたが、康孝さんが亡くなって代をご子息の康正さんがつないだのですが、型紙彫師を替えられたりして、それはそれなりの理由があるのでしょうけれど、“匠をささえた匠たち”が次の時代を繋げていないのではないかと、ひどく気になっているのです。このささえた匠たちのテーマで、私もルポを書いてみようかと思ったこともありましたが、もう‘かきたてる’気がおこらなくて、このまま萎んでいきそうです。

塗師屋のたわごと (角川oneテーマ21 (A-16))

山本 英明/角川書店

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伝統工芸を継ぐ男たち

関根 由子/論創社

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もののみごと 江戸の粋を継ぐ職人たちの、確かな手わざと名デザイン。

田中 敦子/講談社

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by JF1EBPKH | 2017-12-15 23:56 | | Comments(0)